東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)83号 判決
一 特許庁における手続の経緯、本件考案の要旨及び本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは当事者間に争いがない。
二1(一) 前示本件考案の要旨に成立に争いのない甲第九号証の一(昭和五二―二五三一号実用新案公報、以下「本件公報」という。)、二(昭和五三年三月二七日付手続補正書)を総合すれば、本件考案は、ゴルフコース用ゴルフバツグの搬送循環軌道装置に関する考案であつて、ゴルフのプレーにおいては、クラブを入れたゴルフバツグをキヤデイが運ぶかプレーヤー自身が運ばなければならないが、従来の牽引又は自走によるゴルフバツグ運搬車、すなわちカートを使用すると、その車輪によつて大切なコース内の芝生を損傷することから、本件考案はそうした欠点を除去することを解決すべき基本的な技術的課題とし、従来、果樹園等において収穫した果実の運搬手段として用いられていた軌道運搬装置をゴルフコースに適用することを想起し、右課題解決の手段として本件考案の要旨のとおりの構成からなる軌道装置を採用したものであること(本件考案に係る軌道装置はモノレールに限定されないが、以下、便宜上右装置も「モノレール」という。)本件考案はゴルフ場において、従来のカートに代えて、ゴルフコースに沿つたモノレールを採用したことにより(その敷設位置は別紙図面第1図参照、同図の8が支柱付軌条を示す。)、<1>自走車輛が人力によることなく、かつ軌条に案内されて常に正しい姿勢で走行するので、逸走、転倒などの恐れはなく、したがつて、人身事故につながる危険は全くない、<2>軌条が支柱によつて架設されているから、地上障害物に阻害されることなく円滑に自走運搬車を走行させることができる、というモノレール本来の効果に加え、<3>カート道等の専用道路を造成する必要がないから、芝生の植生されたプレーグランドの面積が広くなり、プレー可能なゴルフコース芝生面を充分に確保することができる、<4>ゴルフコースにおいて最も重要な芝生を全く損傷せず、ゴルフコースを最良の状態に保全してプレーヤーのプレーを快適にし、更にコースの芝の育成、保全管理に要する労力、費用等を著しく軽減することができる、<5>プレイヤーは、キヤデイなしに、自らゴルフバツグを円滑に搬送しながらコースを巡回することができる、等のゴルフ場に生ずる特有の効果を奏するものと認められる。
(二) 原告は、本件考案の考案性を否定する主張をするが、本件考案が実用新案法第二条第一項に規定する「考案」にあたるか否かは、本件考案の内容それ自体によつて判断されるべきであるところ、本件考案は、前記(1)において認定説示したとおり、ゴルフコースにおけるゴルフバツグ運搬手段であるカートの走行によつて生じる芝生の損傷を防止することを主たる解決すべき技術的課題とし、右技術的課題を解決するための技術的手段として、本件考案の要旨のとおり、カートに代えて、ゴルフコースに沿つて循環するモノレールを採用したものであつて、右構成を採用したことにより前記の<3>ないし<5>のとおりの本件審決にいう「ゴルフ場特有の効果」を奏するものと認められるのであるから、本件考案が自然法則を適用した技術的思想の創作に当たることは明らかである。原告の右主張は、本件考案と周知技術や公知技術との対比のもとに、本件考案が右公知技術と同一であるとか、右公知技術から極めて容易に想到し得るものであるとして、また、これにより奏される効果を否定することによつて、本件考案が「考案」であること自体を否定しようとするものであつて、採用することができない。
2 そこで、次に、原告は、本件審決は周知技術のもとにおける公知技術の評価を誤つて、本件考案を各引用例記載のものと同一であると認めることはできないとの、また、各引用例の記載に基づいて極めて容易に考案をすることができたものと認められないとの誤つた判断をした旨主張するので、以下、この点について検討することとする。
(一)(1) 第一引用例ないし第五引用例及び第七引用例に本件審決認定のとおりの事項が記載されていることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第二号証の一(昭和四一年一〇月二四日付「農機具しんぽう」、第一引用例)によれば、第一引用例には、「搬送の革命機出現」という大見出しのもとに、みかんその他の果実などの傾斜地における搬送手段として、モノレールの原理に基づいた「モノラツク」と称する「省力搬送機」が開発された旨の記事が掲載されていることが認められ、(2)同号証の二(実公昭四八―三九二六号実用新案公報第二引用例)によれば、第二引用例には、単軌条運搬車のための単軌条を地面から所定の高さに支持する支持装置に関する「単軌条の支持装置」と称する考案について、本件考案の実用新案登録出願前である昭和四一年一〇月一三日に実用新案登録出願がなされ、昭和四八年一月三一日に出願公告されたとの事実が記載されていることが認められ、(3)同号証の三(昭和四二年一一月三〇日発行の「総合農学」掲載の愛媛大学農学部の研究者による「傾斜地果樹園におけるモノレールの運搬機能の関する研究」と題する論文、第三引用例)によれば、第三引用例には、「傾斜地ミカン園の合理化対策の一つとして特筆に値すると思われる事項は、運搬用具としてのセミコースターやモノレールなどの出現である。これらは極く最近、一般の交通運搬施設からヒントをえて傾斜地ミカン園用に改善され、販売されるようになつたものであるが、いずれも急傾斜地の立地条件を克服することのできる有力な施設として、爆発的な人気を呼び、当地付近では、現在、盛んに架設が行われている。」、「モノレールは、樹間のレール上を自走搬器を運行させて、農道や索道の基点から生産資材を運び上げたり、園内から収穫物を農道や索道の基点、または貯蔵庫までおろすのに使用する。」と記載されているほか、モノレールの利点ないし特徴について、<1>一本レールであるから、樹間のつぶれ地が非常に少なく、また、施工上、上下左右の曲がりが容易であるので、みかん園の地形に応じて敷設することができる、<2>スロツトルレバーのみで発進・停止・速度調節が可能であり、また、逆転装置の切替えによつて前進後進も簡単に操作できる、<3>レールの高さは自由に調節できるので、ほぼひざの高さにしておけば、園内のいずれの場所でも自由に、楽に荷の積み降ろしができる、<4>操作が容易で労働も軽いので、婦人や子供も作業に従事することができる等が記載されているほか、運搬能率に関する調査、考察の結果が数値に基づき詳細に記述されていることが認められ、同号証の四(昭和四一年四月一日発行の「機械化農業」掲載の静岡県農業試験場高木宣彦による「注目されるセミコースター・モノレール傾斜地果樹園の運搬施設」と題する論文、第四引用例)によれば、第四引用例には、勾配、運転距離等から検討したモノレールの架設条件のほか、モノレールの架設の形態に関して、「レールは直線路に作つてもよいし、あるいは園内に環状に設置してもよい」との記述のほか、モノレール架設の形態として、直行状、蛇行状、環状に敷設した模式図が記載されていることが認められ、同号証の五の一(昭和四六年七月二九日以前発行の共栄産業株式会社のオートコースターのカタログ、第五引用例の一)によれば、第五引用例の一には、「オートコースター」と称するモノレールのカタログの一隅(写しでは二枚目右下隅)にその用途について、項目的に特に説明事項を加えることなく、「傾斜地、果樹園、桑園などの生産資材、収穫物の運搬」、「薬剤散布装置をつけての薬剤散布」、「しいたけ原木、植林苗木、肥料等の運搬」、「温室、ハウス等の収穫物の運搬、床土の入れ替えや薬剤散布」、「牧場、ゴルフ場、土木工事現場などの諸運搬」、「火薬及機械危険物の運搬」が列挙されて記載されていることが認められ、また、同号証の五の二(昭和四六年七月二九日付日本工業新聞、第五引用例の二)によれば、第五引用例の二には、「多様化と経済性が認められた簡易モノレール運搬車」という大見出しを付した、モノレール等の製造業者六社の広告が掲載され、その広告文中において、モノレールが開発されたきつかけは、急傾斜地にあるみかん園におけるみかんの収穫、肥料の運搬が過酷な労働を強いられるということや、農業労働力の減少ということにあつたこと、モノレールは果樹運搬用だけでなく、農業用(ハウス園芸、しいたけ栽培)、土木建築用、林業用その他、商店(石屋)、鉱山などでも広く使用されはじめ、その性能の多様性と経済性が認識されてきた、との記述があることが認められ、同号証の七の一(原告会社のモノレールホープMH―一一〇のカタログ)、同号証の二(久保田鉄工株式会社のクボタモノレールKMH一一〇のカタログ)(第七引用例)によれば、第七引用例には、右カタログ掲載のモノレールはいずれも、人手不足と傾斜農業地における重労働を解決するものであるとして、その具体的構造が写真、図面とともに紹介されていることが認められる。
(2) 以上の認定によれば、第一引用例、第三引用例、第四引用例及び第七引用例は傾斜地農業、特に傾斜地果樹園における果実その他関係資材のモノレールによる搬送に関する事項を開示するにとどまるし、また、右各引用例によれば、モノレール使用の目的は主として人手不足対策、傾斜地における重労働の軽減にあつたものと認められ、第五引用例のモノレールの用途拡大に関する記載は、前記各引用例に比し具体性がなく、省力性、搬送の容易性、安全性等モノレールの有する運搬手段としての利点に着目し、各分野における将来における活用の可能性を一般的に示唆しているにすぎないものというべきである。更に、第二引用例は前記のようにモノレール用の「単軌条の支持装置」に係る考案にとどまる。
(3) このようにみてくると第一引用例ないし第五引用例及び第七引用例には、本件考案におけるようなゴルフコースにおけるゴルフバツグの従来の運搬手段(カート)に代わるものとしてモノレールを利用するという構成やこれを示唆する記載はなく、また、各引用例の用途からみてゴルフコース内の芝生の損傷防止という本件考案の基本的な技術的課題を示唆するものは何も認めることはできない。なお、前認定のとおり、第五引用例の一には、モノレールの用途に関して、「牧場、ゴルフ場、土木工事現場などの諸運搬」との記載があるが、右記載には具体性がなく、その前後の項目的記載や第五引用例の二の記載から、右に「ゴルフ場……などの諸運搬」とは、たかだかゴルフコースにおける補修資材等の運搬用としても用いることができることを示唆するにとどまり、それ以上に、ゴルフコースにおけるカートに代わるものとしてモノレールを用いることを示唆しているものと解することはできない。
(二)(1) 第六引用例及び第一二引用例記載のモノレールが芝生の補修などのための資材運搬を目的としたもので、プレイ中のゴルフアーのゴルフバツグを搬送するものでないことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第二号証の六の一ないし八(鈴木良治作成の昭和五三年九月一四日付事実証明書その他有限会社朝倉ゴルフセンター経営のゴルフ場「朝倉パブリツク」に関する書類、第六引用例)及び同号証の一二(神戸地方裁判所姫路支部昭和五六年(ワ)第四九四号事件における鈴木良治の
証人調書、第一二引用例)によれば、本件考案の実用新案登録出願前である昭和四六年一〇月に、高知市の「朝倉パブリツク」にモノレールが設置されたこと、モノレールの構成は支柱の側方で軌条を支持する方式のもので、自走車輛は動力車と台車からなつており、モノレールの軌条は、一番ホールのテイーグランドの後方にあるクラブハウス上の道路を始点として、九番ホールのグリーン後方を、一番ホールのコースに沿つて二番ホールのフエアウエイをとおり、同ホールのグリーン右側方を通過し、三番ホールのテイーグランドの後方に至り、この地点で軌条は二方向に分かれ、その一方は三番ホール、四番ホール、五番ホールのフエアウエイ及びグリーンに至つて終点となり、他方は六番ホール、七番ホール、八番ホールに沿い、八番ホールのグリーン側方に至つて終点となつていること、コースがいわゆる山岳コースで、自動車の通行路がないためコースの維持管理、補修に相当な経費と労力を要したことから、こうした点を解決するためにモノレールを敷設したものであること、プレイヤーは、同ゴルフ場が九ホールのシヨートコースで、しかも山岳コースであることから、適当なゴルフクラブを数本持つてラウンドとしており、ゴルフバツグを担いでラウンドすることはなく、したがつて、前記モノレールでバツグを運搬するということも無かつたことが認められる。
(2) 右(1)の事実によれば、本件考案の実用新案登録出願前に「朝倉パブリツク」のコース内にモノレールが設けられていたことは認められるものの、右モノレールは単なる資材の運搬用のためのものであつて、その敷設態様、使用態様からみて、これをゴルフバツグ運搬手段に転用しようとの着想が生まれることは到底考えられないところである。そうであれば、「朝倉パブリツク」のモノレールにはゴルフバツグの運搬手段として、カートに代えてゴルフコースに沿つて循環するモノレールを用いることによりゴルフコース内の芝生の損傷を防止するという本件考案の技術的課題やその構成を示唆するものがあると解することはできない。
(3) 原告は、「朝倉パブリツク」におけるモノレールはゴルフコースに沿つて敷設されたものであり、かつ、右装置においても、カートを芝生上に直接走行移動させることによる欠点を除去している点において、本件考案が解決すべきであるとしている課題を達成している旨主張するが、前認定のとおり、「朝倉パブリツク」においては、ゴルフバツグの運搬にカートを用いておらず、モノレールはゴルフバツグ運搬に利用されているのではなく、その敷設形態も「ゴルフコース内に」敷設されているといえるものの、本件考案のモノレールのように「ゴルフコースに沿つて」(別紙図面第1図参照)敷設されているものということはできないから、たまたまモノレールの敷設により運搬車が芝生上を直接走行移動することがなくなつたとしても、そのことの故に「朝倉パブリツク」のモノレールが前記のような本件考案の技術的課題や構成を示唆するものと認めることはできない。
(三)(1) 成立に争いのない甲第八号証の一、二(昭和五二年三月一六日付有限会社コヤマサービス、有限会社根本農機商会作成の証明書、第八引用例)によれば、本件考案の実用新案登録出願前に「成田ゴルフセンター」には、練習場フイールドから管理室に至る区間にモノレール形式の運搬装置が設置されていたことが認められる。
(2) しかしながら、右モノレールは、前掲甲第八号証の一、二によれば、何らかの方法で集められた練習場フイールドに打ち出されたゴルフボールを管理室まで運搬することを主たる目的としたものであることが認められるから、芝生を運搬手段による損傷から守ることを意図して設けられたものと解することはできないし、本件考案のように、ゴルフコースに沿つて軌条が循環する構成を採るものでもない。したがつて、「成田ゴルフセンター」のモノレールが前記のような本件考案の技術的課題や構成を示唆するものと認めることはできない。
(3) 原告は、ゴルフ練習場とゴルフコースとでは芝生の重要性及び芝生の利用法が相違するとしても、ゴルフコースの芝生の重要性は従来周知のことであるから、「成田ゴルフセンター」のモノレールが「ゴルフコース内の芝生のカートからの保護など本件考案の技術的思想」を十分示唆している旨主張するが、右主張が理由がないことは既に述べたところから明らかであり、たまたまゴルフ練習場の芝生保護に役立つことがあつても、それは同モノレールにおいて課題とされていた事項ではないのであるから、そのことの故に同モノレールが前記のような本件考案の技術的課題や構成を示唆するものと認めることはできない。
(四)(1) 第九引用例及び第一〇引用例に本件審決認定のとおりの事項が記載されていることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第二号証の九(特開昭四七―六二一二号公開特許公報、第九引用例)によれば、第九引用例には「自動ゴルフバツグ搬送車」に関する発明が記載され、同号証の一〇の一(昭和四四年四月五日発行の全国ゴルフ場ガイド)、二(池田カンツリー倶楽部五月平コース図)(第一〇引用例)によれば、第一〇引用例には、大阪府池田市所在の池田カンツリークラブのコースに沿つてゴルフバツグ運搬用の電池動力式キヤデイカートを走行させるためのカート専用路、すなわちカート道が設けられていることが認められる。
(2) 原告は、第一〇引用例記載のものは、芝生上を自走車輛が直接走行移動することによつて生じる芝生の損傷を防止しようとする技術思想を有しているのみならず、本件考案の技術的課題、構成を十分に示唆しているものである旨主張するところ、同引用例の記載からは、右カート専用道はカートの車輪による芝生の損傷を防止することを解決すべき課題とし、その解決手段として設けられたものと推認することができるが、第一〇引用例のカートのための専用道とゴルフバツグ運搬用自走車輛を支持付軌条により走行させる本件考案のモノレールとは、前記課題の解決手段としては相違するものであり、右カート専用道をもつてカートに代えてモノレールを採用することを示唆するものがあると解することもできないから、原告の右主張を採用することはできない。また、第九引用例が本件考案の技術的課題及び構成を示唆するものでないことは明らかである。
(五)(1) 第一一引用例記載のモノレールがゴルフバツグを載せたカートをそのまま乗せて運ぶもので、本件考案による運搬方法と異なるとは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第二号証の一一(神戸地方裁判所姫路支部の前記事件における米山徹朗の証人調書、第一一引用例)によれば、第一一引用例には、<1>昭和四三、四年頃、「道後ゴルフ倶楽部」において、グリーンからテイーグランドまでの傾斜面にゴルフバツグを乗せたカートをそのままモノレールに乗せて運ぶ装置が存在したこと、<2>昭和四三、四年頃、「道後ゴルフ倶楽部」において、照明設備を設置し夜間のゴルフを可能とする計画が立案され、同倶楽部の古茂田専務がモノレール製造業者の米山工業株式会社に対し、ゴレフ場にゴルフバツグ搬送のためのモノレール装置を設置することを提案し、これを受け同会社がゴルフ場へのモノレール設置の検討を進めていたところ、夜間照明設備の経費が高くつく等の理由で前記計画が中止されたこと、<3>昭和四四、五年頃、松山市内のモノレール製造業者の間でゴルフ場にゴルフバツグ搬送用のモノレール装置を設置することがしばしば話題にされたが、キヤデイの反対が予想されたり、ゴルフコースの美観を損なう虞れから一向に具体化にまで話しが進まなかつたことが認められる。
(2) しかしながら、右<1>は、傾斜面上をゴルフバツグを乗せたカートをそのままモノレールで運ぶものにすぎず、本件考案とは技術的思想、構成を異にしていることが明らかであり、また、<2>、<3>は、右調書記載のとおりの事実があつたとしても、計画案の段階で終わつたのであつて、本件考案と同様のモノレール運搬装置が本件考案の実用新案登録出願前に公然知られていたものと認められないばかりか、いまだ具体化するための詳細も明らかでないから、考案としての具体性を欠くものであつたと解するほかない。
(六) 成立に争いのない甲第二号証の一三(第一三引用例)及び同号証の一四(第一四引用例)によれば、第一三引用例は昭和四八年一〇月一一日に刊行された実用新案公報(実公昭四八―三三三六四号)であり、また、第一四引用例は原告製の「モノカート」の「カタログであつて、そこには昭和五五年八月現在の「モノカート」設置ゴルフ場が掲載されていることから、いずれも本件考案の実用新案登録出願後に頒布された刊行物と認められるものであり、しかも、そこには本件考案の構成を示唆する記載は何も認められない。
3 以上のことから、各引用例記載のものは、いずれも本件考案の技術的課題を示唆する点がなく、また具体的構成においても明らかに相違するといわざるを得ない。わずかに、第一〇引用例はカートの車輪による芝生の損傷を防止すべきことを技術的課題としていることが推認されるものの、その解決手段として同引用例が採用したのはゴルフコースに沿つたカート専用道であり、これが本件考案のモノレール、すなわち、ゴルフコースに沿つてゴルフバツグ運搬用の自走車輛走行のための支柱付軌条を敷設した軌道装置とは構成を異にすることは既に述べたとおりである。
しかして、右第一〇引用例を含め、これまで検討した全引用例によるも、本件考案が採択した右のようなゴルフコースに沿つた自走車輛用の支柱付軌条を敷設した軌送装置の構成そのものと同一又はこれを示唆するものを見出すことができない。この点は原告が周知として主張する請求の原因1(二)の<1>ないし<5>の事実を参酌しても変わるところはなく、以上の認定に反し原告が各引用例に関して主張するところは採用の限りではない。
4 叙述の事実によれば、本件考案は原告主張の引用例及び周知事実からは極めて容易に想到するものとは認められず、カートに代えてモノレールをゴルフコースにおけるゴルフバツグの搬送手段として用いることにより、モノレール本来の効果に加え、前記のようにゴルフ場に用いたことによる特有の効果を奏するものであり、それは従来のカートにはみられなかつたものであるから、本件考案をもつて単なるモノレールの用途を限定したものに過ぎないと解することはできない。
右の特有の効果性を否定する原告の主張は、要するに、それはゴルフ場に周知のモノレールを用いたことによる当然の効果にすぎないとする点にあると解せられるが、既に述べたように、ゴルフ場にカートに代えて、モノレールを採用すること自体極めて容易とは認めがたく、そのことは右構成を採用することによりもたらされる効果について気付くことが極めて容易とはいえないことを意味するのであるから、右の構成により従来のカートにはみられなかつた効果を奏し得たものである以上、原告の右主張は理由がないものというべきである。
三 以上のとおりであるから、その主張の点に違法があることを理由に本件審決の取消しを求める原告の請求は、理由がないものというほかない。よつて、これを棄却することとする。
〔編注〕本件考案の要旨は左のとおりである。
ゴルフコースに沿つて立設した多数の支柱上に、ゴルフバツグを運搬する自走車輌を前記ゴルフコースに沿つて巡回走行させる軌条を敷設したゴルフコース用ゴルフバツグの搬送循環軌道装置。